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老人伝[1][2][3]

インタビュー/構成 山本清風

第ニ章
●「BOOWYのコピーはもういやだ」●

わたし「だからもうなにかがパチーンと合ってるんじゃないですかね」

東郷「でも会ったときはそんなにパチーンじゃないもんねえ」

わたし「・・・・・・む、は」

東郷「でもまあそうか、オリジナルやりたいっていう点では一致してたね」

野口「うーん(あいまいな同意)」

東郷「俺はもう、サークルの中でBOOWYのコピーばっかり飽きたよって」

野口・わたし(大爆笑)

わたし「あっ、だからやってたんですねえ(わたしが過去見たライブで、じじいはBOOWYの『NO NEWYORK』を演奏していた。その事実だけでも面白かったのだが)」

東郷「そういうのも・・・」

わたし(次の言葉も待たずに)「ダダダッ・」

東郷・わたし「ジャーン」

東郷「――っていうのも楽しいけれども」

わたし「うん(半笑い)」

東郷「阿呆かと」

野口「ひとりで変なのやってたもんね(東郷さんが)」

東郷「えっ、やってた? あ、ひとりでライブはやってたけど(大学時代のサークルで)自分でね」

わたし「どういうライブだったんですか?」

東郷「なんかキーボードで変な曲弾いたり」

野口「(やっぱり文字に起こせない妙な笑い方。当時を思い出してるんでしょうね)」

わたし「じゃあ、あいつ面白いなーって感じだったんですかね」

野口「個性的だなー、と(笑ってます)」

東郷「【虹の向こう側はどうなっているのかー】とか言って講義を始めるとか」

野口「ははははは(もう敢えては書きません)」

わたし「サークルとかってそうですもんね。没個性的なコピーばっかりで」

野口(笑いすぎてたどたどしく)「似たようなのばっかだけどひっ、ひとり全然違う人が・・・」

わたし「(笑い)」

 野口さん、体勢を立てなおしています。

野口「バンドもやってたけど、ドラムだけ浮いてる感がすごい、なんかおもしれーなって」

わたし「あー それはもう心の在り様が全然違ったんでしょうね」

東郷「だろうねえ、確かにね。――面白いけどもういいよ、みたいなね」

野口「へっへっへへ」

東郷「しかもドラムこういう曲やろうってのが通らないんだよ、そういうサークルってさあ」

わたし「はい(激しい同意)」

東郷「唄う奴とギター弾ける奴の主導権がすごく強いから。・・・・・・じゃあBOOWYでーす、とか(まだ言っている)」

野口「やっぱり形式よりも面白さを優先して・・・へへへ(堪えきれない)崩しちゃう(みたいな所が東郷さんにはある)。・・・・・・だから、まとまらないよね」

わたし「でもそれはやっぱしょうがないですよ。面白ければこれ、何をしてもいいくらいの・・・」

野口(間髪いれず)「そうそうそうそうそう」

東郷「そうそうそうそう」

わたし「それが逆に首を絞めたりするんですよねえ」

野口「そうそうそうそうそう。そうするとまとまんなくて、『もっと面白い、もっと面白い』ってキリがないんだよね」

わたし「で、――出来上がったものが人にまったく解らないものになったりするじゃないですか!」

野口「ははは」

わたし「『なにが面白いのかまったくわからない』って」

野口「ふはは」

わたし「強くなりすぎた悟空とチチの距離感みたいな」

 野口さんの笑い待ちをした後、東郷さんがしめやかにその口を開いた。

東郷「だからその、・・・・・のぐっちゃん(野口さん)とやってた『TO MY FRENDS』ってゆうユニットがあって、もう所謂SPEED・安室奈美恵みたいな曲をつくるわけ。詞を書いてもらって、おれがそれに曲をつけて。だけど、・・・・・・・・・やっぱおかしくなるんだよね」

野口「へっへっへへ、はは」

東郷「だからー、変なことやるよりも普通のことをやって、それが滲み出てくる・ちょうど良くなるっていうね」

わたし「ああー、そうかも知れないですね」

東郷「てゆう実験もしたことがあるよね。・・・・・・・・・だから、そういうバランス取りはね。本当に好きなことだけしちゃまずいな、・・・っていうのも。――あるな、って」

わたし(ははあと思う)

東郷「だからじじいは三人いるから。意見のぶつかることが当たり前の状態で、そういう活動をしてバランスがとれるっていうのは、いいよね」

野口「だから、全員が面白いって一致した瞬間が・・・・・・」

東郷「(笑いながら)そうそうそう」

野口・東郷「すごい面白いよね」

わたし「じじいは面白いことをやりたいってゆう一点だけで結集してるから、ものすごくメンバー同志に厳しいですよね。そのなかで苦しんで這いつくばって、やっと一致するからものすごいんじゃないですかね。これが普通のバンドだったら大したことないですよ。落差がないから」

東郷「そうなんだけど、話し合いで一致っていうのは一度もないのね」

野口(過去のことを思い出している)

東郷「出た結果で・・・」

野口(東郷さんの話の途中なのに)「あー、ないねないねないね。やってみて・・・」

東郷「ああ、それいいじゃない? っていうね」

わたし「はあー」

東郷「方向性が全然違うからねえ、うちは。それぞれ聴いてるものが違うし」

野口「そうだねえ」

 今回のインタビューではじじいの聴いている音楽というのも明らかにしたいと思っていたので、この流れはわたしの理想の展開である。
じじい全員の時と個別に質問したときで出てくるギャップも楽しみたいと思っていた。

東郷「のぐちゃんはだからさあ、真ん中へんにいるんだよね。聴いてるものが。だって俺が聴いてる音楽もまあ聴けるんだよね、面白いって」

野口「オレは途中から玉井の影響を受けてるからねえ」

東郷「そうそうだから、玉井の洋楽系の音楽も聴くし。俺、洋楽って余り馴染みがないんだよね。だからその、ツェッペリン(レッド・ツェッペリン。アメリカのハードロックを開拓したバンド)とかは解るけど」

野口「(あくまで割り込んで)だってそれ、玉井の影響だもの」

東郷「あまり、こう(言葉を選んで)、・・・美味しく感じないんだよね」

わたし「ああー・・・・・・(大好きなので)」

東郷「ただ、二人(野口・玉井)が大好きだっていうレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ。アメリカのミクスチャーロックを開拓したバンド)はさんざん聴いて、なんとか会得はしたんですけれども」

わたし「はい・・・(敬語だったので)」

東郷「だけどやっぱり洋楽よりは邦楽のほうにあの・・・」

野口「テクノとか好きだもんね」

東郷「そう、テクノとか。――変な音楽は聴くから。玉井はそういうのは、特にテクノとかは全然」

野口「ハードロックとかヘビーメタルだもんね。絶対やっぱフレーズ、ハードロックだもんね」

東郷「(ものすごく嬉しそうに)なるねえ・・・」

わたし「そうですね。だから最初じじい見たときに玉井さんのギターが、余り歪んでなくてわりとチャキチャキした音なのに、フレーズがメタルっていうのがすごい面白かったんですよね(メタルに敏感なので)」

野口「はははははは」

東郷「歪んでないってのは、俺があれこれ言うからなんだよね。ほんとは彼はもっとゴォーってやりたいんだけど、その音とこっちがわ(リズム隊)とのアンサンブルが取れないんだよね、そのハードロックの音にしちゃうと」

わたし「そうですねえ」

東郷「で、俺があれこれ言うとさ、『この音どうかな』って彼は思いながらね」

わたし「やっぱりそういう兼ね合いはあるんだろうな、って思ってましたね。久し振りにやったライブを見たときすごい歪んでて、・・・・・・ショックだったんですよね!」

野口(笑ってます)

東郷「あの時は玉井色ちょっと強くしてあったのね。やっぱり彼のやりたいこと、出したい音、好きな音っていうのをないがしろにしちゃいけないし、それを踏まえてでも、こっち側のリズムっていうのはきっちりいれながら、どこまでお互いに許せるのかっていう、やっぱりバランス取りだねえ、あれ」

野口「玉井は玉井でほら、ガンジーさん(東郷さんのあだ名です)に求める音がまた、あるもんね」

東郷「そうそうそう。だからもっとね、単純なんだよね彼はほらハードロックだから。ドラムももっと『ドドドドドドでいいよ』みたいな所があるから」

野口「やっぱりカッチリしたの好まないんだよね」

東郷「好まない好まない」

わたし「でもそうやって、自分の決めた領域が崩されることによって、出てくるものがやっぱ面白いですよね」

野口「(しみじみと)面白いよねえ」

東郷「そうそうそうそうそう」

わたし「やっぱりじじい自体にそういう現象を感じますね。普段の状態から引き出されて面白い音楽に、じじいに成ってるっていう」

野口「一個だとつまんねえけど」

東郷「(たまらず笑いながら割り込んでしまった)そーうそうそうそう」

野口「合わさるとこんなん成るんだーみたいな」

東郷「あるねえ(しみじみ)」

野口「バンドは面白いよね・・・」

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