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老人伝[1][2][3]

インタビュー/構成 山本清風

●はじめに●
 わたしは音楽家を目指し日々自宅で録音している中野区在住のそこはかとない23歳ですが、ある日ある時ある場所で格闘老人(以後、じじい)にインタビューすることになりました。

じじいについては日頃から気になっていることもあったので、そういえば全部訊いてみよう。

ある日ある時ある場所へ行きました。それが2004年7月4日の12時38分から1時45分までのことでした。
どうなることか楽しみだったことがありました。

第一章
●アニメと実写●

 まずは音楽をする、つまりは表現行為についてからの話になりました。

わたし「そこはタイプの分かれるところですね。例えば庵野秀明(『新世紀エヴァンゲリオン』『キューティーハニー』監督)はアニメやってた頃は本当に、コンテの通り一から十まで映像になるのが気持ちいいというのがありましたよね。

つまり自分の中にあるイメージがそのまま映像としてアウトプットされるというのが。
でも今(実写)はそうならないのが気持ちいいという、役者がイメージとは違う動きをするのが」

東郷(同意しながら)「そう、それが今やってるキューティーハニーなわけじゃない? 実写のイレギュラーをどう拾うかって発想だから」

野口「ああ〜」

東郷「それはバンドの方法論と一緒だから、やっぱりメンバーのイレギュラーをどう拾うか、どう対処していくかってことだからね」

 かたやバンドというものに距離を取り、アニメタイプの方法論を実践しているわたしはやはりバンドの楽しさも知っていて、多人数でひとつのものを作り上げる作業が羨ましいのである。
東郷さんは全責任をひとりで負って音楽を続けているわたしの苦労を拾ってくれたあとで、こう切り出した。

東郷「でも、ねえ。――歯を食いしばって続けるようなことだからねえ」

野口「(文字にならないような笑い方)」

東郷「これは。はっきり言うと。――うん。続けていれば何とかなるっていうね、基本的に。
うまくいってるから続けてるんじゃなくて、どんなときでもとにかく続ける。そうすると、なんか見えてくる」

わたし「何がじじい羨ましいかって、中学生時代を一緒にすごしたような仲間とバンドが続けられてるってことですよね。普段の状態で【ツーといってカーだな】という風になるには結構恥ずかしい部分も見せ合わなきゃならない。そういう仲間と音楽をやると出来上がってくるものがぜんぜん違うんですよね」

野口「根っこが繋がってるってことだね」

わたし「そうですね。知り合いではダメだな、と。その程度の表面上のなあなあでは」

東郷「でも、もともとじじいは大学時代知り合った三人だからさ、そんなに古いわけじゃないんだよね」

 そうなのである。じじいは中学生時代の腐れ縁で始めたバンドがそのまま続いていた、そんなイメージを持っていたわたしだったが、三人の出会いは大学時代だったのである。

じじいの歴史については追々明らかになってゆくのだが、それにしても十年という歴史がある。
そして、わたしの自論は通用するのだろうか。


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